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花物語

このサイトの作者は、花が好きで園芸家でもあります。
ここでは、花に関わるエッセイを集めてみました。
時には、陽気なロジャーが旅の思い出話を語ってくれることもあるでしょう。
季節の花を見ながら、思いついたことをブログのように書いていきたいと思います。

2024年以降の書き込みは、こちらから

玉すだれ(ゼフィランサス)2021/09/16


玉すだれの花

エアルーム(heirloom)ということばがあります。
一族や一家に代々伝わっている品物のことで、日本でいうと「家伝の宝物」になるのでしょうか。
LAで種子や球根のカタログを見ていた時に、ある草花や品種にエアルームという説明がついているのに気がつきました。
鳳仙花とか花煙草(ニコチアナ)、松虫草などの昔から庭に良く植えられている草花がそう呼ばれているようでした。
遺伝子組み換えなどで新品種が次々に現れ、外国からも新しい草花が入ってくる中で、古くからある花も大切にしようという気持なのでしょうか。
日本の庭だったら何がエアルームになるのかと考えていて、この花を思いつきました。
玉すだれ。
わたしの祖父母の家の庭にも植えられていました。
多分、七十年以上、もしかしたら百年近く、日本の庭で白い可憐な花を見せてくれていることになります。
花壇の縁取りに良く使われていて、公園やマンションの前の緑地帯などで見かけます。
新奇な花に目を奪われがちですが、こういう馴染み深い花も大切に育てていきたいと思いました。

玉すだれを使った縁取り

きんもくせい 2021/10/16


きんもくせい

近郊の住宅街を歩いていると、ふと、甘い香りが漂ってきます。
辺りを見回して、濃い緑の葉の下にオレンジ色の小さな花が群がっているのを見つけると、ああ、やっぱりという気がして、もうこの季節がやってきたのかと時の過ぎ去る早さを思います。

ロサンゼルスではきんもくせいを見かけることはありませんでした。ネットで探してもみたのですが、英名sweet oliveは、フロリダにはあるようですが、この辺にはないようで、諦めていました。ところが、ある日、フジヤマナーサリーというガーデンセンターで、あの懐かしい香りが漂っているのに気が付きました。探してみると、つやつやした深緑の葉の下に小さな白い花が群がって咲いている木を見つけました。ぎんもくせいだと教えてもらいました。白い花で花付きもまばらですが、甘い香りは同じです。他のガーデンセンターでは見かけたことがありません。フジヤマという名前から、もしかしたら日系人の方が作られたお店だったのでしょうか。南カリフォルニアには第二次大戦前から多くの日本人が移住して、ガーデナーとして働いていたと聞いています。そのうちのお一人が、日本を懐かしんで植えたのかもしれません。

きばなコスモス 2021/11/19



コスモスと呼ばれていても、良く見かけるピンクや白のコスモスとは別種だそうです。繊細なレースのような葉に、明るい色の花を上に向けて日の光を一杯に受けて咲いているのを近所で見つけました。丈夫で、放っておいてもこぼれ種で増えていくそうです。この花も一本だけ、花壇の中で咲いていました。どこからか飛んできた種が芽吹いて花を咲かせたものでしょう。どこででも生き抜いていく凛とした強さと優しい花姿に魅かれます。

つわぶき 2021/12/16



ツワブキ。菊科ツワブキ属。石蕗とも書きます。常緑の多年草で、蕗と同じく葉柄は食用になります。花言葉は「困難に負けない」
真冬に元気よく鮮やかな黄色い花を咲かせているのをみると、なんとなく納得です。日本の小住宅の庭園に昔から良く植えられていました。古い日本家屋では、裏庭に面して縁側が設けられていました。縁側の外に沓脱石が置かれていて、すぐに庭に出られるようになっていました。沓脱石の隣には良くツワブキが植えられていたように思います。軒下の日の当たらないところでもよく育ってくれるからでしょうか。ツワブキも、日本の伝統的な庭園植物と言えるかと思います。
このツワブキは、近所のマンションの日陰になる前庭に植えられていました。庭付きの戸建て住宅が減ってきても、やはり日本の庭には欠かせない花と言えそうです。

水仙 2022/01/15





水仙。今年の正月明け、東京でも雪が積もるほどの寒さでしたが、庭で元気に咲いていました。別名を雪中花というそうです。水仙は春先の花というイメージでしたが、この日本水仙はそのすらりとした気品ある姿と、純白と黄色の清楚な花で、真冬の庭を彩ってくれます。何もしなくても毎年、同じ場所、同じ時期に必ず訪れてくれる信頼できる友です。私の母は松や南天と合わせて良くお正月の切り花にしていました。緑の松の枝、赤い南天の実、白と黄の水仙が薄暗い玄関で一際華やかに、年始の客を出迎えたものです。昔読んだ園芸の本には、水仙は葉を切ってしまうと(華道では「袴」と呼ぶそうですが)地下の球根が太れなくなってしまうので、高級な水仙を切り花にする時は安価な品種の葉を代用にするように、と書いてありました。子ども心に、それは葉を切られる水仙にあんまりじゃないかと思った憶えがあります。細長い葉が必要ならば、野菜のニラを代用にすればよいのにと思いました。実は、水仙の葉とニラは良く似ていますが、水仙の葉は有毒です。間違えて食用にしてはいけません。

もう少し後、3月の復活祭の頃になると、LAでは黄水仙がスーパーなどで束になって売られていました。まだ固い蕾のままの水仙が10本ずつ根本を輪ゴムでとめられています。葉はついていません。水も何もなく、段ボールの中に横倒しにまるできゅうりのように並べられてました。値段はたしか、1束5ドルぐらいだったと思います。買って帰って水を入れたコップに挿しておくと、ぐんぐんと水を吸って根本で3ミリぐらいだった細い茎が10ミリぐらいに膨らんだ頃には大きな黄色いラッパが開きました。春が来るのだと実感しました。



梅 2022/02/13



南岸低気圧通過中だそうで、今日は雪混じりの冷たい雨が降っています。真冬の寒さで人通りもありませんが、たまには日差しの届く日もあります。そんな午後に、白梅が咲き始めているのを見つけました。花弁を開いているのは2輪だけですが、残りの蕾も丸く膨らんでいます。春が近づいています。
日本文学で「花」というと、桜を指すことが多いのだが、それは近世以降の話で、もっと前は「花」というと梅を指したものだったと学生時代に習った記憶があります。確かに、平安時代、詠んだ歌を結んで想う相手に届けた枝は、梅の枝が多かったように思います。こじんまりとした木で、庭に植えるのに都合が良かったせいもあるでしょうし、冬のさなかに花開く健気さが愛されたこともあるでしょう。
梅というと大宰府の梅が有名です。子どもの頃、福岡県に住んでいたことがあるので、大宰府の梅を見に行ったことがあるはずなのですが、梅が枝餅しか憶えてません。平らな餅の上に、梅の花が刻印されてました。美味しかったです。
同じ頃、ネコの足の裏を「梅の花」と呼んでいました。ピンク色の肉玉を順番につつきながら「梅の花、梅の花、咲いたかな、咲いたかな」と唱えると、足裏がぱっと広がる、「ほら、咲いた!」と遊んでいました。ネコにしたらくすぐったくて迷惑だったかもしれません。でも、梅の花咲く2月に、猫の話を2冊目のペーパーバックにできたのは、猫たちのご縁でしょう。感謝です。



タンポポ 2022/03/14




誰もが知っている春の花。野原で、公園で、庭の芝生の間で、都会のコンクリートの隙間からさえ、黄色の花冠が覗いています。誰もが子どもの頃に一度は、タンポポの渡帽子ををふうっと吹いて風に乗ってとんでいく綿毛を眺めたことがあるでしょう。そんな身近な野草、タンポポ。近所のビルの植え込みの中で、小さな白い蝶の訪問を受けているのを見つけました。
英語名はdandelion。フランス語から来ていて、ライオンの歯、という意味だそうです。ギザギザの葉をライオンの歯に見立てた名前で、かわいらしいタンポポには似つかわしくないような気もしますが、タンポポの葉は、古くから東ヨーロッパや中東で食用にされていたそうです。多少、苦味はあるが、サラダによく使われました。O・ヘンリーが「春のアラカルト」Springtime a la Carteというタンポポサラダと恋人を扱ったほのぼのとした短編を書いています。タンポポの花の方は、アメリカで自家製ワインの材料になるそうです。SFの詩人、ブラッドベリに「タンポポのお酒」Dandelion Wineという作者の少年時代を描いたとされる小説があります。

百獣の王は、植物世界でも人気があるらしく、歯があるなら尻尾もとばかりに、「ライオンのしっぽ」の登場です。英語ではlion's tail 学名leontis leonurus。南アフリカ原産のミント(薄荷)の仲間で、高さ1~2メートル、幅0.5~1メートル程に成長します。カリフォルニア、ハワイ、オーストラリアなどの暖かい土地で良く育ちます。
私はカリフォルニアの花屋さんで、花をつけたこの苗を見つけ、名前に魅かれて買ったことがあります。オレンジ色の花は、どうやっても私の花壇計画には合わないのは承知の上でした。元気でよく育ち、毎年、花をつけてくれました。



どうでしょう? ライオンのしっぽに似ていますか?

こでまり 2022/04/15



こでまり。白い小さな花が固まって咲いて手毬のように見えることからつけられたそうです。バラ科シモツケ属の落葉低木。別名はスズカケ。日本の小住宅の庭園によく植えられていて、4月から5月にかけて満開になります。明るい光の中で咲く白いてまり。日本の住宅街の静かな昼下がりに良く似合う花です。これもエアルーム、代々受け継いでいきたい日本の花だと思います。

あじさい 2022/06/15



梅雨入りが宣言されると、町中でこの花が目につくようになります。紫陽花。英語だとハイドランジア。hydrangea。写真の手毬のような花は日本に自生していたガクアジサイから作られた園芸種です。原生種のガクアジサイも風情があって良いものですが、私が子どもの頃は、アジサイと言えばこのボールのような花を指していました。6月から7月にかけて日本全国で開花し、あちらこちらアジサイで有名なお寺や公園は見物に訪れた人で賑わうようです。ただ、これも最近の風潮で、日本原産でいながら、アジサイはそれほど人気のあった花ではなかったようです。

今のアジサイは、江戸時代に日本を訪れた西洋人が、その美しさに引かれてヨーロッパに持ち帰り、品種改良されたものが大正期に入ってきたものと言われています。私が劇団勤務の頃、武士の庭の背景を描いた中に、アジサイの株がありました。その花が丸いボールのような形になっていたのが、江戸時代にはなかったはずだと観客から指摘を受け、あわてて、ガクアジサイに描き直したことがありました。

アジサイが土壌の酸性度によって花の色を変えることは良く知られています。「酸性で青、アルカリ性で赤」い花が咲きます。アジサイの花をもっと青くしたければ土壌の酸性度を上げるような肥料を与えると良いことになります。この性質を使ったミステリを昔、読んだことがありました。アジサイの根元に凶器のナイフが埋めてあったために、花の色が変わって犯人逮捕につながったという話で、現実にどうかはわかりませんが、面白く読んだ憶えがあります。

アジサイの花は咲き始めは黄緑色で、開花が進むにつれて青やピンクになります。こんな風に色が変わることから、「冷淡」とか「心変わり」などあまり良い意味の花言葉はありません。それでも、この花の美しさ、丈夫で育てやすいことから、今では日本でも人気の花です。ガクアジサイにも様々な品種が生まれています。梅雨時の薄暗い世界で一際鮮やかな青やピンクを見せてくれるアジサイは、これからも大切にしていきたい花です。

タチアオイ 2022/07/18




英語ではhollyhock.ぐんぐんと背丈を伸ばしながら、初夏から秋まで咲き続けます。イングリッシュコテージの壁沿いに咲く花として無くてはならない花ですが、最近では日本でもよく見かけるようになりました。この写真は、近くの緑地帯で撮りました。
私もLAの前庭で育てていました。ピンク、クリームイエロー、白花が主ですが、園芸書によればチョコレート色もあるようです。八重咲もあります。この写真で見る、芯のところに細かい小さな花びらが群がってこれもきれいです。私の育てたサマー・カーニバルという品種は、普通花が咲くまで2年かかるのに1年で咲く、しかも八重咲!というので種子を取り寄せたものでしたが、1年では咲かず、1年半後に開花し始めました。しかも、ある株は一重、ある株は八重咲とまだ、安定していない感じで、その数年後にはカタログから消えてしまいました。

それでも、私の育てたタチアオイは丈夫で、毎年、花が終わって切り戻してやると春に新しく茎を伸ばして綺麗な花を見せてくれたものです。5年ほどして株の寿命が来たようで、春になっても新しい芽が出なくなってしまいましたが。花が咲いた後は、円盤のような実が成り、中には平たい種がぎっしりと詰まっています。それを採取しておいて、蒔いて新しい株を育てました。
古くからある花のせいか、庭で栽培している人はLAではあまり見かけませんでした。が、近所の人たちには、綺麗ね、と好評でした。時折、近所のバラ花壇の真ん中に一つだけポツンとタチアオイが咲いていたりしました。あれはうちの種が運ばれていったに違いない、植えたわけじゃないが花が綺麗だからと家の人がそのままにしておいたのでしょう。私の義弟は、故郷の空き地でよく見かけた雑草だと言いました。雑草のような強い生命力を持った夏の花です。次は一重か八重か、何色の花が咲くか、楽しみです。

ひまわり 2022/08/15



英語ではsunflower。夏を代表する花です。いつも太陽に顔を向けている、と言われます。実際に、まだ花が咲く前は、朝は東を向き、昼は南、夕方には西を向いているそうです。開花すると動かなくなりますが、それでも多くの花は太陽に顔を向けたままだそうです。夏と太陽、強烈な日差しを浴びてすっくと立つ姿は、生命力そのものを象徴するようです。最近は色々な品種が出てきて、熊のぬいぐるみを思わせるようなテディ・ベアという品種もあります。色も黄色だけではなく、レモンイエローや赤、黒に近いものもあります。高さも色々、子どもの背より高いもの、小さな植木鉢で育てられる小さなものは窓辺で育てられます。、私は、頂点に一つだけ花をつける昔ながらのひまわりで、まさにその大事な花芽をコガネムシに食べられて悔しい思いをしたことがありました。このひまわりのように枝分かれする品種ならば、良かったのですが。色々な品種が生まれるひまわり、人々に愛されて、これからも夏の花の王者として盛夏の庭を彩っていくでしょう。

葉げいとう 2022/09/18



英語では amaranthus 。熱帯アジア原産の観葉植物です。アメリカの園芸書では、「トライカラー」として載っているものもありました。ヒユ科ヒユ属の一年草。春先に種をまくと、毎年、こぼれ種で増えるほど丈夫です。この写真は赤ですが、黄色と緑が加わったものもあって、そこから、トライカラーの名前もあるのでしょう。
日陰に鮮やかな色を見せてくれるので、北側の塀際の花壇などには重宝しました。
ケイトウという、ニワトリのトサカに似た花を咲かせるcelosia aregentea は、同じヒユ科ですが、ケイトウ属です。英語でも、ケロシアと呼ばれてました。葉ボタンとボタンの関係みたいで、名前は似てるけど違う、ちょっと面白いです。
葉げいとうとけいとう、日本ではどちらも秋の花壇を彩る草花です。花屋さんの店先にもケイトウの小さな花苗が出てきました。夏も終わりです。

柿 2022/10/15



今が旬です。
柿 Diopsyros kaki、英語で persimmon の実です。固くて甘い果実は、ビタミンAがたくさん含まれているそうです。
原産は東アジア、十六世紀にはヨーロッパに渡り、1870年代にアメリカ大陸にも渡りました。英語でパーシモンと呼ばれるのは、アメリカ先住民の言葉で「干し果物」を意味するペッサミンからきたそうです。ヨーロッパの主な産地はスペインで、温暖な気候が柿の栽培に向いている、と言います。
LAでは、普通のスーパーで見かけたことはなかったように思います。日本や中国食品をよく扱う店に行くと、この季節、オレンジ色のつやつやした実が盛られているのを見つけて嬉しかったですね。
柿は、色々な役に立つようで、葉は干してお茶の代わりに飲みます。柿の葉茶というのを友人から頂いたことがあります。子どもの頃に読んだ本で、これから旅行に行く人に「ミカンは乗り物酔いに禁物だが、柿を食べると酔わないから」と言って、柿の実を餞別にしているシーンを憶えています。確かに、冷たくて甘い柿は、乗り物酔いに効きそうですね。
これは、日本のうちの近くで見た柿の木です。二階の屋根まで届きそうによく育ってます。食べごろになるのは、もう少しかな?



エンジェルス・トランペット 2022/11/12



ものの本によると、正式にはキダチチョウセンアサガオと呼ばれるそうですが、園芸品種としてはエンジェルス・トランペット、またはダチュラと呼ばれることが多いようです。春から秋にかけて、下向きの筒形の花をたくさん咲かせます。花色は、白、ピンク、薄い黄色などのパステルカラーが多いようです。下を向いて咲く花が、天使のラッパに良く似てることから名付けられたそうですが、毒性が強いので、子供やペットの周辺では注意が必要です。そのせいか、エンジェルス・トランペットの花言葉は、愛嬌、偽りの魅力、変装です。LAではハロウインの頃に良く咲いてました。この写真は、近所のお庭の木です。二階に届きそうに大きく成長しています。下の写真は、タロットカードの一枚です。大天使ガブリエルがラッパを吹き、墓場の死者が立ち上がるところです。天使がみんな、こんな大きなラッパを吹いたら、さぞかし大きな音がするでしょうね。



紅葉 2022/12/15



先週、鎌倉文学館で、「澁澤龍彦『高丘親王航海記』」を見てきました。澁澤龍彦のエッセイは好きで、良く読みました。今年は没後35年になるそうです。鎌倉は紅葉がきれいでした。昼夜の温度差が大きく、空気がきれいで、適度な水分があり、平地より斜面の方が色づきが美しいそうです。これは、文学館を出たところです。坂道を下っていく際に、きれいな紅葉を見かけて写真をとりました。手前でピンクの花を咲かせているのは、椿です。鎌倉文学館の庭では、「アンデスの乙女」が満開でした。正式には「ハナセンナ」という、マメ科の木だそうです。冬の庭で、黄色の花がぱっと鮮やかで印象的でした。



山茶花 2023/02/15



さざんか。学名はCamelia Sasanqua 中国語で椿を指す山茶、サンサカがなまったものと言われています。常緑の広葉樹で、晩秋から真冬の寒い時に花を咲かせます。椿とは区別がつきにくいのですが、一般に椿よりも小ぶりで、花が平たい感じです。一番大きな違いは、椿は花が丸ごとぽろりと落ちるのに、山茶花は、一枚、一枚、花弁が散ることで、花が咲いている時が一番見分けやすいと言われます。この写真の山茶花もそうですが、住宅街で良く生垣に使われます。冬の花の少ない季節に鮮やかな色合いを見せてくれること、厚い緑の葉が茂ってよい目隠しになってくれることから重宝されるのでしょう。

わたしにとっては、山茶花は、童謡「たきび」の歌詞に出てくることで馴染みのある花です。♪垣根の垣根の曲がり角、たき火だ、たき火だ、落葉焚き、の「たき火」2番で、さざんか、さざんか、咲いた道、と歌われます。最近は火事の心配があって、たき火など見られなくなりました。この歌を聞くと、私の子供の頃、母が裏庭で、たき火をして不要物を燃やしていたことを懐かしく思い出します。

白木蓮 2023/03/16



ハクモクレン。学名はmagnolia denulata。モクレン科モクレン属。名前は、花色と、蓮の花に似た形から。庭木や街路樹として人気で、モクレンの仲間のうちで春先、最も早く花が咲くと言います。紫のモクレンよりも大木になり、高さ5メートルから15メートルまで伸び、上向きの蕾に太陽があたると一斉に白い花を木いっぱいに咲かせます。散ってしまうのも早くて、この写真は先週に撮ったのですが、昨日、通りかかったら、花がひとつも残っていませんでした。これからは緑の葉を茂らせて良い日陰を作ってくれるでしょう。

ナガミヒナゲシ 2023/04/15



長実雛芥子。学名はPapaver deubium.L. ケシ科の一年草、地中海原産で、ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア、オセアニア、南北アメリカ、日本と、ほとんど全世界に広がっています。紅色の花弁4枚の花を4~5月に咲かせます。外来植物で、日本では1961年に世田谷区で最初に確認されたと言いますから、比較的最近に渡ってきた花ですが、繁殖力が強く、2000年以降、爆発的に広まったそうです。長実というように、細長い実の中に1600粒もの文字通り芥子粒のような黒い種を抱し、1つの草が100個の実をつけるとすると、1シーズンで15万粒の種を拡散します。アヘンの原料になるアルカロイドは含みませんが、根と葉から近辺植物の生育を阻害する成分を出すそうで、駆除の対象にするべきではという意見もあるそうです。道路脇の植え込みやコンクリートの隙間などのわずかな土から芽を出し、こんなに可憐な花を咲かせているのを見ると、無理に引き抜いてしまうのは哀れに思います。

カリフォルニアでは日本でハナビシ草と呼ばれるカリフォルニアポピーを良く見ました。カリフォルニア州の州花です。オレンジ色の花を丘一面に咲かせるアンテロープ・ヴァレーのポピー自生地は、春には大勢の観光客が訪れます。やはり丈夫な花で、ふと気が付くと庭の片隅にいつの間にか自生して毎春、可愛い花を見せてくれます。

赤いポピーは、ヨーロッパではやはり野を染めて群生すると聞きました。英国では第一次大戦の戦没者を象徴する花として、11月11日の第一次大戦講話記念日には、赤いポピーの造花を胸に付けたり、あちらこちらに飾っているのを見ました。



クチナシ 2023/06/15



クチナシ。学名はGardenia jasmineoides。英語ではガーデニアと呼ばれます。アカネ科クチナシ属の常緑低木。6~7月に、ジャスミンに似た芳香を放つ白い花を咲かせます。東アジア原産で、本来は一重ですが、庭や鉢に植えられるのは鑑賞用に作られた八重咲が多いようです。半日陰のやや湿った土地で良く育ちます。10~11月ごろに2センチほどの長さの楕円形の実をつけます。この実は無害で黄色の着色料に古くから利用されてきました。母がおせち料理の栗きんとんを作っていた時、レシピを覗いてみたら、乾燥したクチナシの実、というのが載っていたと憶えています。八重咲は実がなりませんので、挿し木で増やします。日本では香りの高い花3種として、このクチナシと、春の沈丁花、秋の金木犀を挙げます。先日、道を歩いていると、ふわっとクチナシの花の香りが漂ってきて、季節の移り変わりを知らせてくれました。もう、初夏です。クチナシの花言葉は、「優雅」。

のうぜんかずら 2023/07/15



のうぜんかずら。ノウゼンカズラ科のツル性落葉低木。学名は、Campsis grandiflora。英語では、その花の形から、トランペット・ヴァイン、トランペット・クリーパーと呼ばれます。7~8月に筒形のオレンジ色の花を咲かせます。丈夫で、ツルは高さ3メートルから10メートルまで成長します。原産は中国ですが、日本では平安時代には渡来していたと見られ、庭木として鑑賞します。蜜が多く、メジロや蜂を呼びます。ハミングバードにも好まれるといいますが、残念なことに私はアメリカでこの花を見たことはありません。夏の季語になっています。ひとつ、紹介しておきます。
夕映えは水に流れて凌霄花 (川崎展宏)『季語の花 夏』から採りました。

さるすべり 2023/08/15



さるすべり 百日紅とも呼ばれます。ミソハギ科の落葉広葉樹。学名は、Lagersfremia indica、英名はCrape myrtle。ギンバイカーミルトに似ているが、花弁がちりめん状に縮れるからそう呼ばれるそうです。和名の百日紅は、花期が長いことから。一つひとつは一日花で、一日でしぼむのですが次々に開花して、7月から10月まで華やかな姿を見せてくれます。さるすべりという変わった名前は、幹がつるつるで、猿でも落ちるだろうという意味です。確かに、淡褐色の幹は、古くなった樹皮が剥がれて、下のつるつるした新しい樹皮に代わり、所々まだら模様になるほど、新陳代謝が旺盛のようです。人間の皮膚もこうだといいんですが、ちょっとうらやましいですね。うちの近所の街路樹になっています。花はピンクばかりではなく、白や紫もあります。暑さ、乾燥に強く、日当たりの良いところを好みます。LAでも街路樹や公園に良く植えられていました。

露草 2023/09/15



ツユクサ。Commelina communis ツユクサ科ツユクサ属の1年草。日本を含む東アジア原産。朝に咲き、昼にしぼむため、朝露のようだというところから露草と名付けられたと言います。英名も、dayflower 空地や道端によく見かけます。6月から9月まで、蝶のような青い花を咲かせます。花弁は2枚に見えますが、もう1枚、小さい白い花弁が下に付いています。黄色い雄しべは6本、上3本、下中央1本、下左右2本で形が違います。雌しべは1本。形の面白い花です。青い色素は、染物の下絵描きなどに使われたそうです。下痢止め、解熱剤にもなり、柔らかい芽、若葉などはお浸し、天ぷらになります。万葉集にも月草として登場。古くから身近な草花だったようです。俳句では秋の季語。この写真は、ご近所の家の路地で撮りました。台風が来た翌朝で、まだ雨粒が残っています。残暑の厳しい9月ですが、この青を見ると、少し涼しさを感じられます。

彼岸花 2023/10/15




彼岸花。秋の彼岸の頃に咲くので、こう呼ばれます。学名は、Lycoris radiata, ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草です。中国原産ですが、日本全国で良く見られます。死人花、幽霊花、地獄花という有難くない別名は、墓地などに良く見られることから付いたのでしょう。曼殊沙華という別名も、彼岸やお寺と関連しています。種では増えないので、森の中にポツンと咲いていることはなく、土手や堤防、田の畔などに群生しています。英名はspider lily。長い雄しべが蜘蛛を思わせるということでしょうか。どうもあまり良い名前をもらっていませんが、見た目の美しさには誰もが魅かれるでしょう。葉は、花の枯れた後に出てきて、翌年の初夏に枯れるという面白い花です。全草に毒性があるので、美しくても、触るのは要注意です。

ススキ 2023/11/12



ススキ。薄、芒、尾花、萱、と様々な名前で呼ばれる、日本人には馴染み深い草木です。Miscanthas Sinensis イネ科、ススキ属の多年草木で、高さ1~2mになり、夏から秋にかけて長さ20~30㎝の花穂を垂直にたてます。秋の七草の一つで、俳句では秋の季語です。最近は皆様忙しく、月見をする方もあまり多くはないかもしれませんが、秋のお月見にはススキと団子が欠かせまん。もちろん、満月とそこで餅をつくウサギも。都会ではススキの生えるような空地も減りましたが、丈夫なススキは道路脇のちょっとした草むらでも元気に花を咲かせています。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」江戸時代の随筆から取られた文句ですが、こんな道路端でも幽霊に見まがうススキがあると、怪奇幻想小説を愛する人間には嬉しいものです。

銀杏 2023/12/15




イチョウ。銀杏、公孫樹とも書きます。イチョウ科の落葉性高木で、学名はGinkgo biloba。中生代から生き残っている最古の現世樹種で、「生きている化石」とも呼ばれます。おそらくは中国が原産で、日本全国で見られます。ヨーロッパには、17世紀に日本から種子が渡ったと見られています。丈夫な性質から、街路樹、公園、神社、寺などによく植えられ、樹高は普通20から30メートル、古木となると40から45メートルにも達します。種子はギンナンで、日本料理にはよく使われます。実の外皮の悪臭を嫌って、動物にはあまり食べられませんが、飢饉の際の食料にもなったようです。ただ、あまり大量に食べると、健康被害が起きます。秋の葉の美しさから、季語は秋です。「金色の小さき鳥のかたちして、銀杏散るなり丘の夕日に」(与謝野晶子)このイチョウは、近くの小学校で撮りました。

2024年

やつで 2024/01/15




ヤツデ。ウコギ科ヤツデ属の常緑低木。学名はFatsia japonica. 別名を「天狗の羽団扇」手の平の恰好をした、大きな厚手の葉は8つの切れ込みがあります。花期は晩秋、10月から12月頃、直径5ミリの白い花が枝先に毬状に固まって咲きます。林の中の日当たりの悪い所にも自生しますが、魔除けとして、庭木としても植えられます。葉を乾燥させて薬用に用いたこともあります。トイレの外に良く植えられていたように思いますが、大きな葉が目隠しになるばかりではなく、ウジを殺すための殺虫剤としても使われたためのようです。岡本綺堂の『半七捕物帖』の「津ノ国屋」の中で、幕末、江戸でコレラが流行った時に、コレラよけのおまじないとして、やつでの葉を軒先に吊るす、という描写がありました。天狗の力を借りて病気を防ごうと、江戸の人々は考えたのだろう、と面白く読みました。花言葉は、分別、親しみ、健康。

ヴィオラ 2024/02/12



ヴィオラ。英語では、viola。スミレ科スミレ属。園芸上は、パンジーの小輪多花種をこう呼びます。花径5センチ以上をパンジー、4センチ以下をヴィオラと分けているようです。1800年代に、野生の三色すみれを北米で交配して作られたそうです。エディブルフラワーで、よく、サラダやデザートの色どりとして使われたりします。私は、パンジー、デージーとともに春の花というイメージを持っていたのですが、最近は冬の花壇になくてはならない花になったようです。元々寒さに強く、温暖なところでは、真冬に咲きます。この写真は、ご近所の庭のヴィオラですが、先週、雪が積もる寒さの中でも元気に咲いていました。
よく繁るので、低木や灌木の下の、雑草除けの生物マルチとしても貴重な花です。子供の頃、庭のバラの木の下に、母がヴィオラを栽培していたのを憶えています。今は、本当に多種多様な品種がありますが、母の育てていたヴィオラは? とネットで探してみたら、Burpeeのカタログで見つけました。Johnny-Jump Up という、紫と黄と白の小輪のヴィオラです。heirloomとありますので、昔から長い間栽培されてきた品種なのでしょう。ちょっと懐かしくなりました。



雪柳 2024/03/15



ユキヤナギ。学名はSpiraea thunbergii。バラ科シモツケ属の落葉低木。日本原産で、本州、四国、九州に分布していますが、自生地は少ないといいます。が、その分、公園や庭先で春先によく見かけます。柳のように垂れた枝に、雪白の五弁の花を枝全体に群がるようにつけ、雪が積ったように見えるために、この名前があります。庭には植えない方がいいと言う方もいらっしゃるようです。生育が早く、あっと言う間に大きくなって手に負えなくなるためだと言います。このユキヤナギは、近くの公園で撮りましたが、大人の背丈ぐらいはありました。日の光に輝くような真っ白な花は、やはり魅力的で目を奪います。これからも春を告げる花として残っていって欲しい花木です。

スノーフレーク 2024/04/15



スノーフレーク。大松雪草、鈴蘭水仙とも呼ばれます。ヨーロッパ中南部原産のヒガンバナ科の球根植物です。水仙に似た葉に、鈴蘭に似た釣鐘型の花を春に咲かせます。耐寒性が強く、毎年、可愛い花を咲かせてくれますが、鈴蘭と同じく、全草にアルカロイド性の毒があるので、庭に植える時にはペットに注意が必要です。人間がニラとまちがえて食べて中毒することもあるといいます。花が咲いてるいる時には、間違えようもないのですが。名前が似ているスノードロップ(松雪草)は、同じく春先に咲きますが、全く違った花で、スノーフレークよりも早く、2月頃に咲きます。ヨーロッパの民話に出てくる、雪を割って咲くのはこちらでしょう。スノードロップの写真も載せておきますね。



シラン 2024/05/15




紫蘭。蘭科シラン属の宿根草。日向の草原によく育ちますが、鑑賞用として、庭園や公園にも良く植えられています。4月から5月に紫紅色の花を花茎の先に数個つけます。葉は、幅広の長楕円形で、薄いが固く、表面に筋が入っています。日本、台湾、中国が原産地です。母が庭で育てていたのを憶えていますが、あっという間に増えていきました。公園などでも群生しているのを見かけます。種で増える蘭は珍しいのですが、この蘭は種が飛んで増えることもあるようです。近くの図書館の前庭で、紫花の中に、白花種が2株だけ混じって咲いていました。珍しく思って写真を撮りました。


羽衣ジャスミン 2024/06/15



ハゴロモジャスミン。モクセイ科ソケイ属のつる性常緑の灌木。英名はピンクジャスミン。学名はJasminum Polyanthum。白から薄桃色の芳香性の強い花を直径2センチの五芒星型に咲かせる筒状花です。原産地は中国。アメリカ、ヨーロッパで鑑賞用に育てられ、日本には昭和50年代に入ってきたと言われます。ジャスミンの名前のとおり、非常に香りが強く、垣根や庭に植えられていると、街路まで香りが漂ってきます。室内に置くには、少し強すぎるくらいの香りです。LAでも見かけましたし、東京近郊でも普通に咲いています。ただ、LAでは、やはり白い星型の花を咲かせるスタージャスミンの方が良く見られたように思います。スタージャスミンもとても香りが強いのですが、モクセイ科ではなく、キョウチクトウ科だそうです。同じ星型の花で、ジャスミンの香りがするのに、植物学は面白いと思いました。下に、スタージャスミンの写真も載せておきます。



百合 2024/07/15



ゆり。夏は百合の季節ですね。LAではイースターの頃に、ガーデンセンターでゆりの鉢植えを良く見かけました。鉄砲百合に似た純白のイースターリリーは、聖母の象徴です。このイースターリリーは、シーボルトが持ち帰った球根から人気が出て生まれたそうです。伝説からするとヨーロッパが原産地のような気がしますが、ゆりは日本の特産品で、球根は明治時代には、絹に次ぐ二番目の主要輸出品だったといいます。日向を好む丈夫なアジアティック・ハイブリッドは、スカシユリ等のアジア各地の百合が元になっていて、半日陰を好む香りの高い大輪のオリエンタル・ハイブリッドはヤマユリが元になっているといいます。この種類では、カサブランカが一番有名です。写真の百合の品種はわかりませんが、オリエンタル・ハイブリッドの一種のようです。芳香が近所一帯に漂っています。












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